症状
事故以前と性格が変わってしまった、物忘れがひどくなった、落ち着きがなくなった、イライラして怒りっぽくなった等
後遺障害のポイント
高次脳機能障害の認定を受けるためには、病院搬送後直ちに緊急開頭術に及んだ場合、入院中何度か開頭術を行った場合等以外は、以下の3つの要件が必要になってきます。
(1)傷病名が脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、脳室出血、低酸素脳症であること
(2)上記の傷病がXP、CT、MRIの画像で確認できる事
(3)頭部外傷後の意識障害が少なくとも6時間以上続いていること、もしくは健忘症あるいは軽度意識障害が少なくとも1週間以上続いていること
意識障害とは、半昏睡~昏睡状態で呼びかけに開眼・応答しない状態で、JCSが3桁、GCSが8点以上のもの、軽度意識障害とはJCSが2~1桁、GCSが13~14点のものを示しています。
JCS、GCSとは
ジャパン・コーマ・スケール(JSC) 日本で考案され、医療機関・救急隊で広く使用されています |
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刺激なしで覚醒 | 1.清明とは言えない 2.見当識障害あり 3.名前、生年月日言えず |
1 2 3 |
刺激すると覚醒 | 1.呼びかけで容易に開眼 2.疼痛刺激で開眼 3.疼痛・呼びかけでやっと開眼 |
10 20 30 |
刺激しても覚醒せず | 1.疼痛に対し払いのけ動作 2.疼痛に少し手足を動かす 3.疼痛に反応せず |
100 200 300 |
グラスゴー・コーマ・スケール(GSC) 国際的に使用される分類で、日本ではあまり使用されません |
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開眼 | 1.自発的 2.音刺激により 3.痛み刺激により 4.痛みでも開眼せず |
4 3 2 1 |
言語 | 1.見当識あり 2.見当識なく錯乱 3.不適当な言葉 4.理解し得ない言葉 5.なし |
5 4 3 2 1 |
運動 | 1.命令に従う 2.払いのける 3.疼痛に対し逃避 4.異常な屈曲 5.疼痛で伸展 6.なし |
6 5 4 3 2 1 |
後遺障害の申請用書式にJCS、GCSの判定をする「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書式がありますので、初診時の治療先でその書類に記入してもらいます。
その書類上で、意識障害があり、高次脳機能障害が疑われるのであれば、後遺障害の申請を視野に入れ、受傷後1年経過を目途に、必要な検査を行い、症状固定時期を検討します。
高次脳機能障害の証明に必要な検査
検査名 | 内容 |
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MRI | 1.5テスラ以上の解像度が必要 |
MRアンギオ | 脳・頚部主幹動脈の異常をチェック |
スペクト検査 | 脳内の血流異常をチェック |
ペット検査 | ブトウ糖、酵素の代謝を観察、脳の局在の機能や神経受容体の異常をチェック |
MRテンソールイメージ | 錐体路→脳梁→帯状回→大脳半球→脳弓、神経線維の減少や短縮を画像で描出、異常が視覚で確認できます |
神経心理学的検査 | 3項目、11の検査で明らかにします |
その他の検査 | 嗅覚脱失、味覚脱失、めまい・失調・平衡機能障害では、耳鼻咽喉科における検査、視野異常の半側空間無視等、眼に症状があれば眼科における検査が必要、四肢に麻痺が認められるのであれば、整形外科、神経内科の検査が必要です |
後遺障害等級
等級 | 後遺障害 | 自賠責保険金額 |
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1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
4,000万円 |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行う事ができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声か掛けや看視を欠かすことができないもの |
3,000万円 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労がまったくできないか、困難なもの |
2,219万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなったりする問題が生ずる。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
1,574万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を悪れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
1,051万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題があるもの |
616万円 |