橈骨神経麻痺
橈骨神経とは、腕に走る大きな神経の一つで、脇の下から出て上腕骨を巻くようにして外側を通り、そのまま前腕まで続いており、肘関節・手関節・指の伸展運動と、手の背部の親指・人差し指部分とその間の水かき部分の感覚を司っています。
橈骨神経麻痺とは、この橈骨神経が上肢のどこかの部分で外部からの圧力により、骨との間で圧迫されることによって起こる現象です。
腕に頭を乗せて寝てしまって、起きた時に腕がしびれているという経験をした方も多いと思いますが、このような症状が一過性の橈骨神経麻痺です。
交通事故では、上腕骨骨幹部骨折などの骨折により神経を損傷したりすることで発症します。
骨折後のギプス固定による圧迫で発症することもあります。
症状としては、手首・手指が伸ばしにくくなり、手の甲、特に親指と人差し指やその間の水かき部分がシビレたり感覚が鈍くなったります。
麻痺の程度が重いと手首に力が入らなくなり手首が垂れ下がってしまう下垂手という状態になります。
手首の筋力が低下したり、親指・人差し指に力が入りずらくなるため、物を持ち上げたり字を書いたり箸を持ったりすることが困難になります。
診断としては、自覚症状に加え、ティネルサインで障害部位を特定します。
※ティネルサイン・・・神経が圧迫されている部位を指や道具で叩くと、
しびれている指先に痛みが発生します。
確定診断には、筋電図・神経伝導速度検査などが有用です。
治療としては、圧迫による麻痺であれば圧迫を取り除けば自然に回復する事が多いです。
安静を保ち、メチコバラミンなどの薬の内服、運動療法や装具の利用などを行います。
損傷により神経が完全に離断されているような場合は、神経縫合・神経移植などの手術が必要なこともあります。
後遺障害としては、神経麻痺により手関節に2分の1以上の可動域制限を残せば10級10号が、4分の3以上の可動域制限を残せば12級6号が、
手指の関節に可動域制限を残せば症状に応じで等級が認定される可能性があります。
また、可動域制限の要件を満たしていなくても神経麻痺として14級相当が認定される可能性があります。