肩関節脱臼
肩関節は、肩甲骨の関節窩という小さくほぼ平らな面の上に、上腕骨頭が乗っているような構造ですので、簡単に脱臼します。
肩関節脱臼は、外傷性の脱臼の中でも頻繁に起こる脱臼で、上腕骨頭のずれる方向によって、前方脱臼、後方脱臼、下方脱臼に分かれ、前方脱臼が全体の90%を占めます。
手をまっすぐ後ろに伸ばした状態で強く地面に手を突いたりすることで、関節窩から上腕骨頭が前方に外れてしまって起こります。
単純レントゲン撮影で診断しますが、上腕骨頭がずれてしまっているので、上腕骨頭を触れば明らかです。
骨折や神経損傷を伴っていることがありますので、それらの検査も必要です。
肩関節の脱臼は、徒手整復されると痛みも可動域制限もほとんどないため、ついつい無理をしてしまい、再び脱臼するということもよくあります。
脱臼の原因が外傷で、さらに同じ外傷によって脱臼を繰り返すと、反復性肩関節脱臼になります。
外傷が原因でない脱臼を繰り返すと、習慣性脱臼になります。
脱臼を繰り返す要因としては、バンカート病変(※1)、ヒル・サックス病変(※2)、関節包の緩み、関節窩の摩耗などがあります。
※1.関節窩の関節面を覆う軟骨である関節唇の断裂や関節包の剥離が原因で何度も脱臼が起こる病変
※2.上腕骨頭と関節窩がぶつかることで、上腕骨頭が陥没骨折してしまい何度も脱臼が起こる病変
ほとんどの場合、徒手整復する保存療法がとられます。
徒手整復にもいろいろありますが、代表的なのがヒポクラテス法とコッヘル法です。
ヒポクラテス法・・仰向けに寝かした患者の脱臼したほうの脇の下に征服者の足を押し入れ、患者の腕を上下に引っ張って整復する方法です。
コッヘル法・・・・・脱臼した患者の腕を内側、外側と順番に回しパズルのようにはめ込ンで整復する方法です。
高齢者や脱臼を繰り返している方は、麻酔をしなくても徒手整復することも可能ですが、筋力のある若い方や脱臼後数日たつような方は、痛みと筋肉の緊張を和らげるため、全身麻酔をしてから徒手整復します。
徒手整復後、2~3週間は三角巾などで固定します。
上記でも書いた通り、痛みや可動域の制限がないからと言ってここで無理をすると、反復性肩関節脱臼になりますので安静が必要です。
初めて脱臼を起こされた方の内、20歳以下の方では90%以上が、20歳以上の方では約60%が、反復性肩関節脱臼に移行するといわれています。
反復性肩関節脱臼になり、脱臼を繰り返すことで日常生活に制限が出るようであれば、手術も考えなければなりません。
剥がれた関節唇などを元の位置に縫い付けたり、骨や腱で補強する手術方法があります。
後遺障害についてですが、反復性肩関節脱臼になれば、12級6号が認定される可能性があります。