鎖骨骨折
交通事故において鎖骨骨折は非常に発生しやすい骨折で、肩から地面に倒れこんだり、地面に強く手を突いたりすることで骨折します。
骨折の部位により、鎖骨の肩に近いほうで骨折する鎖骨遠位端骨折、鎖骨の真ん中あたりで骨折する鎖骨骨幹部骨折、首に近いほうで骨折する鎖骨近位端骨折に分かれます。
単純レントゲン撮影で診断が可能です。
鎖骨遠位端骨折は、骨折の仕方によって3つに分類され、治療法も異なります。
①安定型・・・・・・烏口鎖骨靭帯附着部より肩側(烏口鎖骨靭帯附着部と肩鎖関節の間)で骨折した場合で、この場合は、保存療法がとられるのが一般的です。
②不安定型・・・・烏口鎖骨靭帯附着部のあたりの骨折で、烏口鎖骨靭帯の損傷・断裂を伴うことがあり、この場合は、手術療法がとられます。
③関節内骨折・・肩鎖関節内(肩鎖関節とくっついている鎖骨の関節面)で骨折した場合で、この場合も、手術療法が一般的です。この部分の骨折は、見逃されやすいので注意が必要です。
鎖骨骨幹部骨折では、
①神経叢麻痺を合併している場合
②第3骨片が認められる場合(骨折部が2ヵ所ある場合)
③転位が大きい場合
④骨折部が皮膚を突き破り、皮膚が壊死する可能性がある場合
を除いては、保存療法が一般的です。
ですが、鎖骨は胸鎖乳突筋の力で上方に引っ張られており、骨折した場合、上方に転位しやすくなっています。
鎖骨骨折は、ほとんどの場合、徒手整復を行い鎖骨バンドで固定する保存療法がとられますが、上記の理由から保存療法を選択した場合、骨がずれて癒合する確率が高くなります。
それでもなお、保存療法をとる理由の1つとして、手術をするよりも骨癒合が良い事も挙げられます。
骨折時に起こった骨膜損傷が、手術によりさらに悪化し、骨形成が悪くなることによって、偽関節を起こす可能性が捨てきれません。
手術療法を適用した場合は、OAプレートでの固定やキルシュナー鋼線を使用する鋼線締結法などで鎖骨の固定を行います。
ですが、鎖骨は安定性が悪いため、金属で固定する手術をしても、金属疲労のため固定している金属が折れて、それが原因で痛みを引き起こすことがありますので、手術を選択するときには主治医とよく話し合って決めることが大事です。
後遺障害としては、鎖骨の転位癒合によって裸になった状態で鎖骨の変形が確認できれば12級5号が、鎖骨遠位端骨折で肩関節に可動域制限を残せば、
2分の1の可動域制限で10級10号、4分の3の可動域制限で12級6号が、痛みが残れば14級9号の可能性があります。