自賠責保険とは

 自動車損害賠償責任保険とは、自動車損害賠償補償法(自賠法)によって、自動車事故により生命または身体が害された人身事故の被害者を救済するため、原則として原動機付自転車を含むすべての自動車に対し契約することを義務ずけている強制保険です。
 自賠責保険に加入せずに自動車を運行すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。(自賠法86条の3第1号)

自賠責保険で賠償される場合

 自賠責保険は、自動車の※1「運行」によって※2「他人」を死傷させる事により、加害者が法律上の賠償責任を負った場合について支払われます。
支払いの対象は、人身損害に限られ、車両損害等の物的損害は賠償されません。
 また、電柱に自ら衝突したような自損事故の場合にも賠償されません。

※1「運行」とは、自動車の走行中が代表的な例ですが、その他にもドアの開閉、クレーン車のクレーン作業、ダンプカーの荷台の上げ下げ等も含まれます。
 しかし、「運行」していない自動車は対象外です。例えば、駐車場に駐車してある自動車に、遊んでいる子供がぶつかって死傷した場合などは対象外です。

※2「他人」とは、所有者や借受人など、自動車を自分の思い通りに使う事が出来る者以外の人の事をいいます。ですから、被害者所有の自動車を友人が運転していて自損事故を起こした際、その自動車に同乗していた所有者が死傷した場合などは対象外です。被害者本人が所有する車による事故のため、被害者の方は「他人」に当たらないからです。

損害の範囲と支払い基準

●傷害による損害(支払限度額:被害者1名につき120万円)

損害項目 内容 支払い基準
治療費 診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料、通院費、柔道整復等の費用など 必要かつ妥当な実費
看護料 近親者等の付添い
(医師が看護の必要を認めた場合または被害者が12歳以下の場合)
原則として入院
1日につき4,100円
入院付添2,050円
諸雑費 入院中の諸雑費
(治療に直接必要のある諸物品の購入費、使用料など)
原則として入院
1日につき1,100円
通院交通費 通院に要した交通費 必要かつ妥当な実費
その他実際に
要した費用
義肢・メガネ代・コンタクトレンズ代等 必要かつ妥当な実費
(メガネ・コンタクトレンズ代は、50,000円が限度
診断書等の費用 診断書・診療報酬明細書等の発行費用 必要かつ妥当な実費
文書料 交通事故証明書・被害者側の印鑑証明書・住民票等の発行手数料 必要かつ妥当な実費
休業損害 事故による傷害のために発生した休業による損害
(有給休暇を使用した場合を含む)
主婦等の家事を専業とする方にも支払われます。
原則として休業
1日につき5,700円
これ以上に収入減の
立証がある場合は実額
(19,000円限度)
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 1日につき4,200円

●後遺障害による損害(支払限度額:被害者1名につき等級により次の金額)

 後遺障害とは、交通事故によって身体に将来においても回復が困難と見込まれる障害が残ったため、労働や日常生活に支障があると認められる場合です。

施行令別表第1(単位:万円)

級別 1級 2級
支払限度額 4,000 3,000

施行令別表第2(単位:万円)

級別 1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
支払限度額 3,000 2,590 2,219 1,889 1,574 1,296 1,051
級別 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
支払限度額 819 616 461 331 224 139 75
損害項目 内容 支払い基準
逸失利益 労働能力が減少したために将来発生するであろう収入の減少 収入及び各等級に応じた労働能力喪失率、喪失期間などにより計算します
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 傷害の程度に応じ、(別表1)1級1,600万円~(別表2)14級32万円

保険金が減額される時

 自賠責保険においては、被害者に重大な過失があった場合にのみ、被害者の過失割合により下表の割合が損害額から減額されます。

被害者の過失割合 後遺障害による損害・
死亡による損害
傷害による損害
7割未満の場合 減額なし 減額なし
7割~の場合 20%減額 20%減額
8割~の場合 30%減額 20%減額
9割~の場合 50%減額 20%減額

時効について

 請求の期限を過ぎると時効となり、自賠責保険からの支払いはなくなります。
被害者請求の場合は事故があった日から2年以内です。
 ただし、死亡による損害については死亡日から、後遺障害による損害については後遺障害の症状が固定した日から、それぞれ2年以内です。
※平成22年4月1日以降に発生した事故については3年に改訂されました。

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