【事案】

 堤防道路を走行中、側道より走行してきた一時停止無視の車に側面から衝突され、そのまま堤防より落下したことにより、外傷性くも膜下出血、胸椎破裂骨折、肋骨多発骨折等の怪我を負った事故。

【問題点】

 大怪我の方にはよくある事だが、多部位に骨折等がある場合、どうしても治療はそれらが中止になってしまい、例えば高次脳機能障害や耳鳴り・難聴などの症状は後回しになりがち。後回しだけならまだしも、何もしなければそのまま治療終了になってしまう場合も多々あり、そうなると大きな障害が残っていたとしても評価されず、本来えら得るべき賠償額が大幅に消滅してしまう可能性が!

 この方の場合も、胸椎の破裂骨折や肋骨骨折などがあったため、高次脳機能障害及び耳鳴り・難聴についてはノーマーク。ただ、てんかん発作があったため、投薬のための治療は継続していた。

 本人も、背中の痛み等はしきりに訴えるが、それ以外の症状の訴えは薄い。こちらで深く聞き取りしてやっと、記憶力が低下していることや感情をコントロールできないこと等が分かってた。これにより高次脳機能障害の疑いが出てきたとともに、耳が聞こえにくい事や耳鳴りが激しい事なども判明。

 しかし、本人とお話ししていても、すぐに感情が高ぶり、冷静に話すことがなかなか難しいため、ご家族にもお話しを聞く。やはり事故後からの数々の不可解な行動がたくさん出てきた。これらの事を総合すると、間違いなく高次脳機能障害の可能性があると感じる。

 だが、このままでは、整形部分に残った障害のみの評価に留まってしまい、高次脳機能障害を含め、他の後遺障害が見逃されて終わってしまう。

【立証ポイント】

 早速治療先の病院に同行し、高次脳機能障害の検査をしてほしいと依頼するところから始める。今回はてんかん発作もあったため、脳波の検査も忘れずに検査に加えてもらう。それとともに、耳鼻科にもかかり、難聴、耳鳴りについても治療および検査を開始してもらう。

 病院に何度も同行し、検査結果一式をもとに脳神経外科、耳鼻科で後遺障害診断書を作成してもらう。ご家族にも何度かお会いし、ご家族が感じている事故後の変化をお聞きし、それらをまとめたレポートを付けて申請。

 もちろん整形外科の後遺障害診断書に関しても注意が必要。今回は破裂骨折に伴う可動域制限が焦点だったので、忘れがちな胸腰椎部分の可動域計測も依頼。間違いのない計測を見届けた。

 今回の事案も、事故からかなり時間が経ってからの難聴、耳鳴りの訴えのため、事故との因果関係を否定されることを懸念していたが、耳鳴り・難聴で12級相当、胸椎破裂骨折で8級2号、高次脳機能障害で7級4号が認められ、併合5級の認定を得る。