前十字靭帯損傷・断裂
前十字靭帯とは、膝関節の中にある靭帯で、大腿骨と脛骨を繋ぎ、
脛骨が前方に引き出されたり、膝が不安定になるのを防ぐ機能を持っています。
前十字靭帯の断裂ではなく、前十字靭帯付着部剥離骨折を起こすこともあります。
症状としては、断裂した当初は激痛と膝関節周辺の腫れ膝関節可動域制限がありますが、
日がたつとともに、痛みも腫れも引いてきます。
ただの捻挫ぐらいに思い放置していると大変です。
少し激しいスポーツをすると膝崩れを起こしたり、膝関節が外れたような感覚になることがあります。
当然そうなると、半月板や他の靭帯が損傷することもあります。
そんなことを繰り返していると、寝返りを打っただけで膝が外れるようになり、激しい痛みを伴います。
診断には、まずはLachmanテストで大まかな診断をし、その後MRI撮影するのが一般的です。
Lachmanテストとは、脛骨を前方に引っ張り動揺性やズレがあるかを調べる検査です。
Lachmanテスト
治療法としては、保存治療と手術の選択です。
保存療法では、硬性装具を使用して大腿四頭筋、ハムストリング筋の強化です。
ですが、前十字靭帯断裂は、膝関節の安定に大きな障害を残しますので、手術が一般的です。
手術の方法として、自身の靭帯、腱(ハムストリング腱、膝蓋腱など)を用いる方法と、
他人の靭帯を用いる方法があります。
地域によっても違いますが、血液バンクと同じようなもので、靭帯バンクというものがあり、
亡くなった方の靭帯を保存してあるところがあります。
自身の靭帯を使うか他人の靭帯を使うかに関しては、どちらにも一長一短があります。
自身の靭帯を使用する場合は、使用した腱部分の筋力がどうしても落ちてしまうことです。
他人の靭帯を使用する場合は、現在では発見されていない未知伝染病などに感染していて、
将来それによって何かしらの病気を引き起こす可能性を残すことです。
ご自身の生活環境から、どの方法をとるかを検討します。
前十字靭帯付着部剥離骨折の場合は、靭帯ごと骨片を整復し、
CCSで固定する方法がとられることが一般的です。
術後は、膝関節の拘縮を防ぐため、すぐにリハビリを開始します。
ギブス固定などはしないのが一般的です。
また、両松葉杖を使っての荷重負荷の訓練、方松葉杖を使っての、さらなる荷重負荷の訓練と、
徐々に負荷を大きくしていきます。
併用して、硬性装具を使用しての筋力トレーニングです。
術後はどうしても膝関節が固まっていますし、筋力も落ちていますので、
リハビリは非常に重要です。
前十字靭帯損傷・断裂では動揺関節が後遺障害の対象になります。
手術をした場合は、膝関節が動揺することはほとんどありませんが、
保存療法を選択した場合は、膝関節に動揺を残す可能性があります。
動揺性で、固定装具が常時必要であれば8級、常時ではないものは10級、
常時必要ではないが、激しい労働時に必要であれば12級が認定される可能性があります。
動揺関節がのこらない場合でも、常時疼痛がある場合は後遺障害12級13号、
14級9号が認定される可能性があります。
立証には、ストレスXP撮影が必要です。